福岡市西消防団 団長 中村甚司さん┃30年以上に渡り市民の安全を守り続ける消防団団長の活動にかける想いとは(前編)

毎度、地域で活躍する様々な方にお話を伺っていくこのコーナー。今回は福岡市西区に点在する9つの消防団を取りまとめる福岡市西消防団で団長を務める中村甚司(なかむらじんじ)さんにお話を伺ってきました。

ー本日はお忙しいところお時間をとっていただき有難うございます。よろしくお願いします。

 

中村甚司さん(以下「中村団長」):よろしくお願いします。

 

ーそれではまず簡単に自己紹介を御願いします。

 

中村団長:福岡市西消防団で団長を務めております中村甚司と申します。年齢は65歳で仕事は農業を営んでおりこれまではトマトを育てていましたが今年からアスパラガスの栽培を始めました。

 

ーありがとうございます。65歳ということですが消防団に入団されてどのぐらいになられるんですか?

 

中村団長:今年で33年目になります。

 

ー33年!ベテラン中のベテランですね!

 

中村団長:いえいえ、とんでもない。まだまだ私より上の方はいらっしゃいますよ。前の団長なんて50年もおられたので30年ちょっとの私なんてまだまだです。

 

ーそんな世界なんですね。消防団に入団されたきっかけは何だったんですか?

 

中村団長:この地域のひとは高校を卒業して農業を継ぐにあたって地元の青年団に入るのが通例なんです。そして青年団で数年間活動して青年団を卒業すると次は消防団に入るっていうのが当たり前の事だったのでなんの疑問も持つことなく消防団に入団していました。

(元岡地区は農業が非常に盛んな地域である)

ーなるほど、そういう慣習があったわけですね。

 

中村団長:そうですね、きっかけはそんなもんです。入団してからは役職のない一般団員として元岡分団にて12年ほど活動してそこから徐々に団員から班長、部長、副分団長、分団長と役職が上がっていって、西団本部にて本部長から副団長、そして団長といった具合に役職が変わっていきました。

 

ー中村団長は現在、福岡市西消防団の団長ということですね。

 

中村団長:西消防団にはまず9つの分団があります。姪浜、能古、壱岐、金武、今宿、今津、周船寺、元岡、北崎の9つになります。私は元岡分団の一般団員として入団しました。能古と姪浜が30人ずつ、金武が40人、残りの6つの分団が60人ずつ、そして本部に6人の計466人の団員が所属しています。

 

 

(消防団の組織図「福岡市HPより」)

ーなるほど、466人の団員の方々が私たちの街の安全を守ってくれているのですね。消防団の普段の活動についてお伺いさせてください。

 

中村団長:消防団というのはまず消防署と違って公務員ではないんですね。非常勤の準公務員という形になるんです。まず火災が発生した場合は119番に連絡が入ります。すると福岡市中央区天神にある指令センターに連絡が入るようになっています。例えば姪浜で火災が発生した場合、指令センターで現場の状況をよく聞いて火災とはっきり判明しない場合は消防署だけでの対応になりますが、煙が出ていたり炎が見えるなど火災だとはっきりしたときは消防署と一緒に消防団も出動となります。

 

消防団の出動が必要かどうかは例えば夜間の発生であるとか、車の交通量が多いかどうかや、風の強さであったりなどその時の状況によって判断されます。消防団が必要だと判断された場合、指令センターから本部の団長宛てに要請の専用メールが送信されてきます。そこからさらにそれぞれの団員に送信され、分団の車両庫に集まって出動します。そこから災害現場にて活動をするいう流れになります。

 

 

ー現場ではどのような活動をされるのでしょうか?

 

中村団長:現場では様々な活動があります。放水して水をかけるだけではなく現場の交通整理をしたり規制線を張ったり、あとは消防署のポンプ車と消火栓の中継役を担ったりなどバックアップというか予備的な作業が多いですね。

 

ーとても重要な活動ですね。消防団の補助が無いと消防署もスムーズに消火活動に当たることが出来なさそうですね。

 

中村団長:消防団とは地域の人たちの集まりなんです。なのでみんな地域の事を熟知していて消火栓の位置などもしっかりと把握してます。姪浜のような整備されたところだと大丈夫なんですが元岡のような田舎となってくると火災現場からどこの消火栓が一番近いかなどは地元の土地勘のある人間じゃないと難しいんです。

 

特に山火事になると消防署の方は水利がわからないことが多いんです。どこにため池があってどこに消火栓があって、どの道を行けば現場にたどり着けるかが山なのでわからないんですね。そういったときに地元の消防団員が先発して進んでいって水利を確保して消防署を誘導するんです。

 

ーなるほど、消防団員の方ではわからないようなその土地の特性を把握した消防団員の方がリードすることでスムーズな消火活動につなげているのですね。

 

中村団長:そうですね、消防局・消防署員は一度に出動できる人数が限られていて少ないんですね。なのでそういった部分でも消防団が補っているところはあります。

 

ー消防署と消防団が連携をとることが大事なんですね。他にはどういった活動がありますでしょうか?

 

中村団長:先日、マリノアシティでのイベントでも披露したのですが伝統技術の保存なども行っています。

 

ー伝統技術と言いますと?

 

中村団長:昔ながらの太鼓や纏を使った演舞の事をいいます。消防団の歴史のはとても古く、江戸時代まで遡ります。江戸時代に火事があったときに火消しが現場に一番乗りで行って纏をもって屋根の上に登っていたんです。屋根に登る理由は諸説ありますが、登った屋根まで火が来るとその纏を持った人が焼け死んでしまうのでそれまでに火をすんだという消防団の士気を高めるためだっていう説があります。

 

ーなるほど、時代劇で見る「め組」ですね。

 

中村団長:そうですね、「暴れん坊将軍」で北島三郎さんが演じられていましたね。そんな江戸時代の伝統を伝えていくことを目的に太鼓や纏を使った演舞の練習をして、イベント会場などで披露しています。

 

ー伝統を後世に伝えていくことはとても大事ですね。

 

中村氏:纏や太鼓の他にも木遣り唄という労働歌があって作業をするときに歌われていた歌があります。お祝い事の際にはこれも披露したりします。

 

 

    (各団にそれぞれの纏がある)    (火消しといえば北島三郎さんが有名である)

ー歴史ある消防団の伝統行事を残し続けているわけですね。

 

中村団長:そうですね、あとは消防団の主な活動としては消防少年団(BFC)というものはあります。消防少年団は小学校4年生から6年生までの子供たちを対象に、防災に関する知識及び必要な知識を授け防災思想を普及し、団体生活、規律、責任感を養い合わせて社会奉仕することを目的とし、その中で規律訓練や放水体験、ロープ結び体験に消防署などの施設見学などを実施しています。

 

ーそれはとても楽しそうですね。

 

中村団長:はい、普段の生活では体験することが出来ないことばかりなので子供たちはとても楽しそうに参加してくれています。少しでも消防について興味をもって防災意識なども芽生えてくれたら嬉しい限りです。

ーこれをきっかけに子供たちが消防署員や消防団員を目指してくれたらいいですね。

 

中村団長:そうですね。消防団の活動はまだまだいろいろとありますが主な活動は以上となります。  

 

 

ーありがとうございます。私たち市民が安全に暮らしていけているのは消防団の活動があってこそだとわかりました。前半はここまでとさせていただきます。後半ではさらに深く消防団についてお伺いできればと思います。有難うございました。 

【福岡市西消防団団長 中村 甚司 さん】 

福岡市西消防団の団長を務め30年以上に渡り私達市民の安全を守るための活動を続けている。西消防団の団長を務めると共に、地元元岡にてアスパラガス農園を運営する農家の顔を持つ。

【福岡西消防署(福岡市西消防団)】

住所:〒819-0161 福岡市西区今宿東1丁目7番12号

電話番号:092-806-0642

FAX番号:092-806-6462

福岡市の各消防団では、随時消防団員を募集しています!

 

年齢18 歳以上で、市内に居住または、通勤・通学している方であれば、入団できます。

 

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詳しくは下記リンクにてご覧ください。

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