真宗大谷派 護念山 稱讃寺 護山信麿さん┃ご縁の大切さを伝え続ける住職の視点から見える姪浜とは(後編)

ーそれでは後編もよろしくお願いします。

 

護山信麿 住職(以下、「住職」):よろしくお願いします。

 

ー様々なご縁がつながって稱讃寺でのお勤めをすることになったということですが当時の心境はいかがでした?

 

護山住職:それはやっぱり不安がありました。お寺でやるべき基本的な事はこれまでと一緒ではありましたが、以前の実家のお寺の門徒さんと稱讃寺の門徒さんはやっぱりそれぞれ地域の特色や考え方が違うわけですから私という人間が受け入れてもらえるか不安でした。その逆もまた然りで門徒さん達も私に対して不安はかなりあったと思います。

 

ーなるほど、実際に稱讃寺へ移ってこられてどうでした?

 

護山住職:前編でもお話しした当時の門徒会の役員のみなさまがありがたい事に私の事を受け入れてくださったことで最初の頃に抱えていた受け入れてもらえるかどうかという不安はとても和らぎました。今こうして稱讃寺でお勤めをしていられるのもその方々のおかげと言っても過言ではありません。

 

ー稱讃寺へ移ってきてどのくらいで門徒の方々と打ち解けられたんですか?

 

護山住職:それは、慣れたかどうかなどは私から申し上げるべきではないように思います。

ただ、周りの人たちからは10年はかかると言われていました。私が稱讃寺へ来て約20年ほど経ちますがようやくかなと思う部分もありますがまだまだだなって思う部分も多々あります。

 

ーこれまでお寺の様々な行事に参加させて頂いて、門徒の方々と触れ合う住職を幾度か拝見させていただく事があり非常に良好な関係を構築されていらっしゃるようにお見受けのですがそれでもまだまだですか?

 

護山住職:私としてはまだまだ全然だと思っています。しっくりと来ていない部分はありますしそういう気持ちを忘れて甘んじてしまうと驕りが出てくると思っています。人間というものは何か一生懸命に物事に取り組んでいくとどこかで驕りが出てくるものなんです。そこで立ち止まって自分自身に問い直すという時間が必要だと思います。人生というのはそれの繰り返しであって決して有頂天にならないように日々のお勤めでは気を付けています。

 

 ー移ってこられて良かったと思った点は何ですか?

 

護山住職:稱讃寺に移ってきてからは私の判断で行動し門徒さん達と共に改革していくことが出来るという楽しさがありました。実家のお寺では父や兄がいたので私は二人の指示に従って行動をすることが基本でしたが、自分のやりたいこと・自分のやろうとすること・自分の方針で何かが出来るのは良かったと思います。

 

ーなるほど、誰かの判断にゆだねるのではなくご自身の判断で行動ができるようになったわけですね。

 

護山住職:もちろん、先代の住職がこれまでやってこられてきたことの足跡が当然あるわけで、先代のやり方と私のやり方でどうしても違いが出てきて比較対象になるのでそこは大変でした。先代の方針と私自身の方針とのバランスを考えながら行動することに気をつけていましたね。

 

ーありがとうございます。続いてお寺のお仕事のやりがいやモットーについてお伺いさせてください。

 

護山住職:生き死にに携わる仕事なので良い事ばかり、楽しい事ばかりではなく哀しい事もつらい事もあるわけでそういった中で私たちがやるべき事は教えを伝えるということです。どう伝わるかはわからない部分はありますが伝えることによって、それに対して相手の方が応えてくれることが出てきます。その時は本当に嬉しいです。たとえば親や祖父母がが亡くなって、息子さんや娘さん達がお寺へ来るようになりお孫さんもお寺へ来るようになり、教えが下の代の方達にも伝わっていることが分かった時は非常に嬉しいです。

 

ー住職のこれまでの教えがその方に伝わりその方にとって大切なものとして子供やお孫さんに伝わっていったという証しですね。

 

護山住職:私たちもいずれは死ぬわけです。そうなってくると大事なのは【相続】なんです。相続というのはお金や表面的な物の事ではなくて先祖を敬い感謝するなどの教えの相続の事をいいます。先祖の方々いるおかげで今の私たちの生活がある、上の方々が努力してくれたおかげで今こうして暮らしていくことが出来ている尾です。普段当たり前に出来ていることの素晴らしさありがたさを改めて確認しながら生活していくことが大事だと思っています。それを確認された方々が相続をされてお寺に来たりお孫さんを連れてお参りをするっていう、相続されたものを見ると嬉しいです。

 ーなるほど、今こうして自分が生きていることも当たり前ではなくご先祖様の方たちがいたからこそ成り立っていることを忘れてはいけない、大切にしなければならないのですね。

 

護山住職:ただ、近年は情報化社会が進んでデジタル化されてきたことによって合理的・簡素的に物事を済ませるような社会になり、時間のかかるものや面倒くさいものが省かれるような時代になってきました。人とのコミュニケーションも希薄になってきていてある意味、お寺も合理化・簡素化される対象の一つになってきてしまっています。さらには近年の新型コロナウイルスの蔓延により人とのご縁が希薄になっていくのは本当に残念です。

 

ーやはりコロナの影響は大きいですか?

 

護山住職:ご縁を大切にしていくお寺全体に非常にマイナスです。特にお葬式では家族のみで執り行われるようになったのは非常に寂しく思います。本来、葬儀に来られる方っていうのは亡くなられた方とご縁があった方なわけで、葬儀に来られた方が亡くなった方の生前は「こういう人だったよ」といった話をすることで残されたご家族が知らなかった一面を知ることが出来る機会が失われてしまって、広がりが無くなってしまいます。

 

ー葬儀がつなぐご縁があるんですね。

 

護山住職:葬儀や通夜は亡くなった方に対しての敬う気持ちであったり、報恩いわゆる恩に報いるという残された家族が最後に亡き人に対して応えるべきことなのだと私は思います。コロナウイルスの影響もそうですが近年は資本主義の世の中になりすぎて、葬儀に対する意識も変化しております。もちろん、現実問題として葬儀・通夜にはお金が必要になってくるので出来るか出来ないかっていうことは出てくると思います。そうなった時にまずは葬儀社ではなく私達お寺に相談をして欲しいと思っています。お寺でも葬儀はできますし、ご相談いただければ出来る限り亡くなられた方へ応えるべく通夜、葬儀の大事さを伝えられる葬儀をご提案致します。

 

ーなるほど、亡くなった方へ思いをきちんと応えるためにもまずはお寺に相談をすることが一番

最初に取るべき行動ということですね。

 

護山住職:時代は移り変わっていくもので教えに関していえば時代に合わせて表面的なやり方や伝え方は変わったとしてもご縁を大切にするという根本は変わりません。なぜそれが大事なのかを教えていくことは変わりませんし無くしてはいけないものになります。そこをどう伝えていくかということが今の時代に私たちに課せられた問いだと思っています。

 

 

ー話は変わりますが、住職が稱讃寺へ来られたころの姪浜の様子はどうでしたか?

 

護山住職:もう20年ほどになりますが、今は商店街ってほとんど閉まっていますが当時はまだ半分くらいはお店があって、マンションが増えていっている時でこれから商店街がどうなっていのかって状況で過渡期のような時でした。

 

ー住職が思う姪浜の魅力は何ですか?

 

護山住職:飲食店は美味しいお店が多いですよね。昔ながらのお店もあれば新しいお店もどんどん出来ていてそれは非常に良い事だと思います。今は区画整理され道路も広くなり駅南側も昔と比べると全然違います。新しい街として出来上がって来ていて沢山の方が移住してこられていてとても住みやすい街だと思います。

 

ーありがとうございます。姪浜の街がもっと良い街になるにはどうしたらいいと思いますか?

 

護山住職:若い人たちが街に増えて子供たちが増えているのはとても良いことだと思うのですが、これは姪浜に限ったことではありませんが昔と違って隣人ですら話しかけないような時代になっています。私は幼少期から商店街で育ってきて隣何十軒先の人でも自分の事を知ってくれているっていうのが普通でみんな声をかけてくれていました。そんな街になればもっといいのになとは思います。いざっていうときに助け合いにもなりますから。

 

ーこれも人とのご縁が希薄になってきているからですよね。

 

護山住職:そういった意味ではお寺をもっと活用してもらえたらとも思います。お寺っていうのは本来誰が来てもいい場所なんです。もっと気軽にお寺に来て地域のご縁を繋ぐ場にしてもらえたらと思っています。

 

 

護山住職:稱讃寺では夏には地域の子供たちに水風船を配ったり、お寺でサマースクールを開いたり今ではヨガやコーラスといろいろと活動していて、木で例えるならこれらの活動は枝葉であり、これを積み重ねていくことで大きな幹になっていくと思っています。そうやって未来を背負っていく子供たち若い世代に手を合わせていく生活が大切なんだということを伝えていければと思っています。

 ーなるほど、地道な活動を続けていくことでご縁が積み重なっていくということですね。

ーここまで非常に心に残るお話を聞かせていただきました。最後にホームページを御覧の方々に何か一言お願い致します。

 

護山住職:先ほども申しました通り、お寺は誰が来てもいい場所です。姪浜へ来られた際は是非お気軽に立ち寄っていただけたらと思います。

 

ー今日は長い時間本当にありがとうございました。

 

 

護山住職:ありがとうございました。

真宗大谷派 護念山 稱讃寺

護山 信麿さん

姪浜に位置する浄土真宗東本願寺派の寺院【真宗大谷派 護念山 稱讃寺】の住職としてご縁を大切にする浄土真宗の教えを伝え続けている。地域の子供たちに向けたサマースクールの開催や地域の方々へのヨガやコーラス教室を開くなど地域のご縁を繋ぐ活動に力を注いでいる。