大正から続く老舗畳店の3代目店主 緒方孝徳さんの姪浜に込めた思いとは(前編)

姪浜の地で大正時代から90年以上続く老舗畳店【緒方畳店】の3代目店主の緒方孝徳さん。緒方さんは姪浜の街にくらしいろんな人との繋がりを経て姪浜を代表する畳店としてこれまでやってきました。そんな緒方さんに緒方畳店の歴史や思い出、姪浜への想いや魅力などを聞いてきました。

ー今日はよろしくお願いいたします。まずはお店のことなど自己紹介をお願いします。

 

緒方:緒方畳店を経営している緒方孝徳です。姪浜のこの場所で大正14年ごろに創業して自分で今、3代目になります。

 

―大正14年ということはおよそ90年以上続く老舗ですね。3代目ということは緒方さんのお祖父さんが創業者であると。

 

緒方:そうやね、じいちゃんがやりよった畳の仕事を親父が受け継いで、親父が受け継いだ畳屋を俺が受け継いだみたいな。

 

ー緒方さんが畳屋で仕事を始めたのはいつ頃なんですか?

 

緒方:俺が20歳の時やね、今53歳やけん33年前か。

 

ー33年!もうベテラン中のベテランですね。仕事を始めた時はお祖父さんとお父さん、緒方さんの3人で仕事をしてたんですか?

 

緒方:いや、自分が始めた時はもうじいちゃんは亡くなっとったけん親父と俺の二人やったね。

 

―仕事を始めた当初はやっぱり大変でしたか?

 

緒方:いや~かなり大変やったよ!今と違って仕事を始めた当初はまだまだ畳が盛んな頃やったけんとにかく忙しかった!朝から夜中の12時くらいまで毎日働いて休みとか2か月に1日あれば良かった方やないとかいな?多分年間の休みとか盆と正月休み合わせて20日くらいしかなかったよ。

 

ーめちゃくちゃ過酷ですね!体壊してしまいそうです。

 

緒方:体とかは全然平気やったんやけど仕事しながら専門学校に行かないけんかったのが本当にしんどかったね。

 

―専門学校?畳のですか?

 

緒方:そう、畳の専門学校があるっちゃん。そこに週1回、3年間通ったんよ。ていうのも畳の1級技能士ってのがあるっちゃけどそれを取るには専門学校に通って試験に通らないかんっちゃん。畳屋をやるうえでは持っておきたかった資格やけん頑張って通ったもんね。

 

ー働きながら3年も通うって大変ですね、しかも仕事もかなり忙しいのに。

 

緒方:うん、ただ専門学校が畳屋で働いてる人しか通うことができん(実技は現場で学ばなければならないとのこと)ってルールやったけん専門学校におる人はみんな同じ境遇の人達ばっかりやったけん、きついのは自分ひとりじゃないって思って頑張れたかな。

 

―なるほどそうやって苦労しながら専門学校に通って資格も取ったと。

 

緒方:そうやね、これがあると一つの信用の証になるけん、お客さんにも見えるごと合格証書は飾っとるよ。  

(1級畳技能士の合格証書。高度で精細な技術と知識がなければ取ることができない。)

ー1級技能士を無事に取ってお父さんと一緒に切り盛りしていったわけですね。

ー緒方さんがお父さんから代替わりしたのはいつ頃だったんですか?

 

緒方:自分が41歳くらいの時に変わったね。

 

―何かきっかけがあったんですか?

 

緒方:親父が病気になって仕事が出来んくなったっちゃん。病気になってからもちょこちょこはしよったんやけどなかなか難しくなったけん自分がやるようになったかな。

 

ーなるほど、自分に代が変わったことでの苦労を教えていただけますか?

 

緒方:それまでは親父がとってきた仕事を黙々とこなしていくってスタイルで仕事しよったけど親父がおらんくなったけん自分で仕事を取ってこないかんくなったのが大変やったね。

 

ーこれまでと変わって経営者としての仕事が出てきたってことですね

 

緒方:そうやね、しかも困ったことにもともとこれまで仕事をしたお客さんの連絡先とか載ってる顧客名簿があったんやけど親父がこれからはお前が自分で仕事を取ってこいって言って引き継ぐ時に名簿ば全部捨てたっちゃん。やけんこれまでのお客さんにこっちからアプローチを掛けることができんでかなり頭は抱えたね。

 

ーそれはたしかに頭抱えますね。

 

緒方:やろ?だけん最初はどうしようって思いよったんやけどありがたい事にこれまでのお客さんが先代の息子やけんって言ってかわいがってくれて仕事を依頼してくれたりしたけん実際は顧客名簿が無くても大丈夫やったっちゃん。

 

ーそれは本当にうれしいですね。これまで二人でやってきたことが代が変わってもつながっていけて。

 

緒方:本当に有難かったね。ずっとこの土地で長い事やってきたってのがあるけん周りの人もみんな知ってくれてて地元の友だちとか知り合いも注文してくれたりしたおかげで何とか乗り切れたと思う。

 

ーそこから緒方さんが経営する畳屋が軌道に乗り出すわけですね。

 

緒方:そうやね、そこからは事業自体は安定して特に大きな波があるわけでもなく地元に根を張って仕事をさせてもらってる感じやね。 

 

ー地元ならではのお仕事とかってあります?

 

緒方:地元ならではって言うか姪浜って旧唐津街道があっていたるところに沢山の御寺さんがあるやん?うちはそんな姪浜周辺のお寺さんの二畳台はほぼ作らせてもらっとるね。

 

ー二畳台って何ですか? 

 

 

緒方:有職畳っていう特殊な畳の一つで厚畳とも呼ばれているんやけどその名の通り厚みが2畳で広さが半畳の台で神社や仏閣なんかの格式の高い場所で使われるもので一般の家庭においてることはまずないような畳なんよね。

(こちらが二畳台。通常の畳よりも厚みがあり、縁の模様も特別なものとのこと)

ーなるほど、一般的な物より出回っている数が少ないってことですね。しかし歴史的ん建造物が沢山ある姪浜でそんな仕事が出来るってのは良いですね。

 

緒方:そうやね、ありがたいことに姪浜界隈のお寺さんはかなりの数がうちに依頼してくれとるちゃんね。神社とかお寺さんってこの先もずっと残っていく歴史ある建物やん?そんなところにうちの畳が使われているってのは凄く光栄なことよね。これも地元だからってのがほんと大きいと思う。

  

ーずっと姪浜の歴史に緒方畳店ありって感じですね

 

緒方:そんな風に言ってもらえるように頑張っていかないかんね。

ということで前半は緒方孝徳さんに緒方畳店のの歴史を中心にお話を伺いました。

後半ではさらに深く緒方畳店の魅力を掘り下げ、姪浜の魅力についてお話を伺いました。

乞うご期待ください。

緒方畳店 代表

緒方孝徳さん

国産の高品質なイ草にこだわった畳を提供し続ける【緒方畳店】の3代目オーナー。

消防団の団長や商店会の役員を務めるなど姪浜を盛り上げるために様々な活動に従事している。

【緒方畳店】

住所:福岡県福岡市西区姪の浜3-11-62

TEL:092-881-1094

営業時間:8:00~19:00

定休日:日曜日

ホームページ:https://tatami-store-204.business.site/